今回も、神道のお話を少しさせていただきます。
神職の作法についてです。詳しくは書きませんが、神職の動き方はとても細かい「決まり」があります。
ぜひ、この記事を読んでいる方も、実際の神社参拝にお役立ちいただければ幸いです。
神職を目指すわけではないので、最低限、大切にしなければならない点をピックアップしてご紹介します。
言挙げせず、が神道の基本
まず、なぜ神道は作法が大切なのでしょうか??
神道の基本的な考え方として、「言挙げせず(ことあげせず)」という言葉があります。
どういう意味かをすごく簡単に言うと、「言葉にしない」ということです。
万葉集の中にも、「葦原の 瑞穂の国は 神ながら 言挙げせぬ国 然れども 言挙げぞ我がする」という歌があります。
日本という国は、言霊の国ですので、むやみに言葉にするのは慎重にしてきました。言葉には霊力があると考えられているからです。個人が意見を発するのは「神」のみができることであって、人は神の言うこと(言挙げすること)に従って生きていく・・というのが日本的な生き方だとする考え方もあります。
今のグローバル社会では、日本人は意見を言わない、、なんて言われますが、日本人はもともと自分の意見を言ったり、理論闘争することを良しとしなかったのです。察する文化ですよね。
言いたいことは言わなければならない!という欧米とは基本的に違う考え方なのです。
どちらがいい、悪いという話ではありませんが、私個人的には、自分という我をなるべく落として、神様にお任せ、という生き方が好きです。
神道は、まさに、「感じる宗教」。言葉で学ぶ宗教ではないのです。
体は心を表す
そのため、神道は「かたち」を大切にします。
「体は心を表す」という言葉がありますが、神前での体の動きで、私たちの神様への心を表す、というのが、神道で大切な考え方です。
だから、神主さんはあまり神社で教訓を言ったりはしません。それは、参拝する人が「感じたこと」がすべてだからです。そのことを尊重したり、批判することはできないのです。
この自由さが、日本の良さですね。
「正中(せいちゅう)」と「神前」を大切に
いかがでしょうか?神社での「作法」の大切さがわかったところで、実際にどういう点に注意するべきかです。
まず、上位と下位、という考え方があります。
上座、下座、という言葉を聞いたことがある人もいると思います。上座は会社の上司やお客さんなど、立場が上の人が座る場所、下座は、自分や部下が座る場所、のように分けられますよね。
上位、というのは神様に近い場所と考えればいいと思います。
一番の上位は神様がいらっしゃる場所です。神前ですね。
神前の作法
なので、足を前に出して「蹴る」ような作法はしてはいけません。神前から去るときは、少し前かがみになって、うやうやしく足をそっと引いて下がります。
細かい話をすると、「進左、退右(しんさたいゆう)」という言葉があって、神前で、進むときは左から、退くときは右足から、という決まりもあります。立つときは「起右 座左(きゆうざさ)」とって右足から立って、左足から座る、という決まりまであります。
「神前では、神様を蹴らないような作法をする」とだけ覚えておきましょう。
正中の作法
もう一点は、「正中(せいちゅう)」です。
正中というのは、神社の真ん中のラインです。参道の真ん中を歩いてはいけない、なんて聞いたことがある人もいるかと思います。参道の真ん中は、正中なので歩いてはいけないのです。
正中というのは、神様の通り道です。なので、人は歩いてはいけないんですね。
基本的に、正中を避けて歩きましょう。もっと上級者になると、正中をまたぐ(横切る)ときは、頭を下げて横切ります。
もっと上級者になると、例えば、正中の右側にいると、正中に近い方が上位になるので、遠い方の足(下位の足)、右足から歩き始めたり意識してやります。が、一般の方はそこまで意識する必要はありません。
礼の作法
「礼」もいろいろあって、ざっくり3種類あります。深揖(しんゆう)45度の礼、小揖(しょうゆう)15度の礼など、かなりマニアックな名前の礼があります。
参拝で知っておくといいのは、90度の拝、60度の深い磐折(けいせつ)45度の浅い磐折です。名前はおぼえる必要はありません・・
まず、一番使うのは「拝」です。2礼2拍手1礼で神社作法するときの礼を「拝(はい)」と言います。
90度に腰を曲げる礼です。しっかり90度まで腰を曲げて、神様への畏敬の念を示しましょう。
あと、なにかのお祓いを受けるとき・・神主さんが「祝詞」をあげますよね。その時は頭を下げているのですが、その時は60度くらい、結構深く腰を曲げます。基本、祝詞の奏上中はずっとです。
*長時間はきついので、無理はしないでください!
あとは、祓いを受けるときです。白い紙がついている棒で、ばさ~ばさ~って振りますよね。それを受けるときは、45度くらいに腰を曲げます。
礼一つでも、いろいろありますよね。今度、神職さんを見るときは、礼や足の動きにも注目してみましょう。神職の見どころは「かたち」です。作法から、神様の存在を感じれるような作法をする神主さんが、一流です。
参拝するときや、お祓いを受ける時も、今回ご紹介したことをやるだけで、かなり作法を知っている人だと思います。
言挙げも必要な時代に・・
さて、話を言挙げにもどすと、今の時代、何も言挙げせず、というのも難しいですよね。
実際、神道も、神仏習合によって、平安時代の半ばから、だんだん言挙げされるようになり、神道の精神を強調されるようになりました。
私たち日本人も、何も主張しなければ、国際社会ではやっていけないのが現状ですよね。
日本は言霊の国ですから、いい言葉を言挙げしていきたいですよね。
相手を言いくるめたり、批判したり、愚痴を言ったり、攻撃するような言挙げではなく、相手がうれしくなる言葉、勇気が出る言葉を言挙げしましょう!