「神饌」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?「しんせん」といって、お祭りで神様に差し上げる食べ物のことを言います。
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神社参拝の流れと作法、意味を神主が解説します。
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こちらの記事でお祭りや祈願の流れを説明しましたが、そのなかに「献饌」という儀式がありました。簡単に言うと、食事を神様に差し出す儀式です。
その食事を神饌(しんせん、または、みき)と言います。
神饌とは
「お・も・て・な・し」が流行ったのを覚えているかもしれません。
「おもてなし」は日本の特徴的な文化ですが、神道からきているのでは?と私は思います。
なぜなら、「神饌」(しんせん・みき)は、まさに神様を「おもてなし」するためのものだからです。お祭りで、神様をおもてなしするために、食事を差し出し、そのお下がりを参列した人たちでいただく「神人共食(しんじんきょうしょく)」のが、日本神道の特徴です。
昔から、その時代の「最高の食事」を神様に差し上げてきました。
それが神饌です。
日本人は「神饌」というものを通して、昔から「おもてなし」の精神があったということですね。
本当に最高なものです。國學院大學の隣にある資料館で、昔の神饌の模型を見ることができます。確か無料だったはず・・ですので、興味のある方は一度見学に行ってみてください。
誰が準備するの?
さて、「誰が準備するのか?」という話ですが、神社のお祭りでは総代の方や神職で準備するのが普通です。
地鎮祭では、工務店の方が準備するのが普通になってきました。けれど、土地の神さまを「おもてなし」して、感謝の気持ちを示す・・のであれば、施主の方が準備するのが良いかと思います。
嘘のような話ですが、この業界??にいると、いろいろな話が耳に入りますが、衝撃的だったのは、某地鎮祭で、「おもちゃの野菜」がお供えされていた・・とのこと・・信じがたい、というかウソであってほしいですね。
神饌の種類は
次に、神饌の種類です。
地域によって違いますので、一概には言えません。九州南部では、「焼酎」があげられるなんて聞いたこともあります。
基本は、お米、酒、海菜、野菜、果物、塩・水 です。
魚は鯛が普通ですが、尾頭付きであれば他の魚でも大丈夫です。野菜も甘菜(葉物の野菜)、辛菜(根菜類)の両方をお供えします。
大根やホウレン草、ニンジン、ゴボウなどが基本です。野菜もですが、果物も季節の旬のものをお供えするのが一般的です。
三方というものに乗せてお供えします。
神饌の並び方は
並び方には順番があります。
基本は、お米→酒→海菜→野菜→果物→塩・水
の順番です。しかし、お供えするにも決められた順番があります。
このように、三方の順番が決まっています。
お米が一番目ですから、①のところに置きます。基本的に真ん中が①、次に右→左、というように順番が決まります。
偶数の時が難しいですが、↑の図のように、真ん中の右が①となります。
①のところに米、②のところに酒、③に海菜・・・というようにお供えしていきます。
神饌のお下がりは
神饌は、お祭りが終わったら直会(なおらい)という席で頂くのが基本ですが、お酒のみを頂くのが普通になっています。神様が召し上がった食べ物を、私たちが頂くことによって、神人一体となる(神様と人が一体となる)という意味があります。
地鎮祭などでは、神主さんが持ち帰るのが通例です。
神饌に供えてはいけないもの
基本的に、神道では4つ足動物は禁忌です、
本来は、犬なども神社には入れてはいけません。実際、「犬を入れないでください」と書いている神社もあります。神主さんも、本来的にはお祭りの前には、潔斎といって、4つ足動物は食べてはいけない事になっています。
なので、豚や牛をお供えするのはNGです。
それと、、意外にやってしまうのは、「値札」をつけっぱなしになっていること。
こまかいところですが、誰かに食べ物をもらって、値札がついていたら、なんか嫌じゃないですか??こういう気づかいも、神様に対する敬神の念につながります。
神様に対する感謝と畏怖の念を、神饌に込める、という意識が一番大切ですね。