「またニュースで戦争の映像が流れている。胸が痛いけれど、自分には何もできない」――そんな無力感を抱えていませんか?
子どもに「どうして戦争するの?」と聞かれたとき、あなたはなんと答えますか。じつは、戦争をなくすために私たちができることは、思っているよりもずっと身近にあります。
「知る」「伝える」「選ぶ」「投票する」。どれも今日からすぐに始められることばかりです。歴史をふり返ると、世界を変えてきたのはいつも、一人ひとりの小さな行動の積み重ねでした。
この記事では、戦争が起こる原因から、日常の中で実践できる7つの具体的な行動、そして子どもに平和を伝える方法までをわかりやすく解説しています。読み終えたとき、きっと「自分にもできることがある」と感じてもらえるはずです。
もくじ
今も世界で続く戦争と紛争の現実を知る
今この瞬間にも、世界のどこかで戦争や紛争が続いています。ニュースで目にする映像の向こう側には、昨日まで普通の暮らしをしていた人たちがいます。まずは、今の世界で何が起きているのかを知ることから始めてみましょう。
① 2024年〜2025年に起きている主な戦争と紛争
「戦争は遠い昔の話」と思っている方も、少なくないかもしれません。しかし現実には、2024年の時点で世界中で59もの紛争が同時に進行しています。この数は冷戦終結以降でも極めて多く、ここ数年は犠牲者の数が増え続けている状況です。
とくに深刻なのが、ロシアとウクライナの戦争でしょう。2022年に始まったこの紛争は長期化しており、東部ドンバス地方を中心に激しい戦闘が続いています。ウクライナ国内では何百万人もの人が住む場所を失い、ヨーロッパ全体のエネルギーや食料の価格にも影響を及ぼしました。
また、2023年10月以降のイスラエルとパレスチナ(ガザ地区)での大規模な衝突では、多くの民間人が犠牲になっています。子どもや女性を含む一般の住民が巻き込まれ、人道危機はいまも深刻な状態が続いているのです。
さらに、アフリカのスーダンやコンゴ民主共和国、ミャンマー、イエメンなどでも紛争が長引いており、世界各地で人々が命の危険にさらされています。これらの紛争は報道される機会が少ないため、わたしたちの目に触れにくいのが現実でしょう。
② 紛争が子どもや難民に与える深刻な影響
戦争や紛争がもたらす被害は、大人だけにとどまりません。ユニセフの報告によると、紛争の影響を受けている地域で暮らす子どもの数は約4億7,300万人にのぼり、これは世界の子どもの6人に1人以上にあたります。
紛争地域では学校が破壊され、子どもたちは教育を受ける機会を失います。紛争のある国で暮らす子どもは、そうでない国の子どもと比べて、学校に通えなくなる確率や栄養不良になるリスクがはるかに高くなっているのが実情です。さらに兵士として利用されたり、性的暴力の被害にあったりするケースも後を絶ちません。
また、2024年末の時点で、紛争や迫害によって故郷を追われた人の数は1億2,320万人に達しました。これは世界の約67人に1人が避難を強いられていることを意味します。難民のおよそ40パーセント、国内避難民の49パーセントは子どもたちです。
安全な場所を求めて国境を越えたとしても、避難先での生活は決して楽ではありません。言葉の壁や文化の違い、経済的な困窮、将来への不安など、さまざまな問題に直面することになります。戦争は終わっても、そのダメージは何十年も残り続けるのです。
③ 日本に住む私たちにとっても他人事ではない理由
日本は第二次世界大戦の終結から80年近く、直接的な戦争を経験していません。そのため、紛争のニュースをどこか遠い国の出来事として見てしまいがちでしょう。しかし、グローバル化が進んだ現代では、世界のどこかで起きた紛争がわたしたちの暮らしに直接影響を与えます。
たとえば、ロシアとウクライナの戦争が始まった直後、日本でもエネルギー価格が急騰しました。小麦などの穀物価格が上昇し、パンやパスタ、食用油などの値段が軒並み上がったのは記憶に新しいでしょう。紛争は物価の上昇を通じて、わたしたちの食卓にまで影響を及ぼすのです。
また、日本は国際社会の一員として、紛争解決に向けた資金援助や人道支援を行っています。つまり、わたしたちの税金の一部は、世界の平和維持活動に使われているということです。
そして何より大切なのは、同じ地球に暮らす人間として、遠い国で苦しんでいる人たちへの想像力を持つことではないでしょうか。「自分には関係ない」と思った瞬間から、無関心という名の壁ができてしまいます。その壁を少しだけ低くすることが、平和への第一歩になるはずです。
戦争をなくすためにまず理解したい「争いが起こる原因」
戦争をなくすために私たちができることを考えるには、まず「なぜ戦争が起こるのか」を理解することが欠かせません。原因を知ることで、自分たちに何ができるのかが見えてきます。
① 民族・宗教・資源をめぐる対立の構造
戦争や紛争が起こる原因は、ひとつではありません。民族の違い、宗教の違い、資源の奪い合い、領土をめぐる争いなど、さまざまな要素が複雑にからみ合っています。
たとえば、パレスチナ問題では、ユダヤ人とアラブ人が同じ土地をめぐって70年以上も対立を続けてきました。アフリカでは、金やダイヤモンド、石油といった鉱物資源を独占しようとする武装グループによって、住民が暴力にさらされるケースも少なくありません。
民族や宗教そのものが争いの「原因」ではなく、それらの違いが権力者によって「対立をあおる手段」として利用されているという見方が、近年の研究では有力になっています。つまり、違いがあるから争うのではなく、争いたい人が違いを利用しているということです。
この構造を理解するだけでも、ニュースの見え方はずいぶん変わってきます。「あの国の人たちは仲が悪いから」と単純に片づけてしまわず、もう少し深く考えるきっかけになるでしょう。
② 経済格差と政治的不満が紛争を生むメカニズム
紛争の根っこには、経済的な不平等や政治的な不満が潜んでいることが多いものです。ある特定の集団だけが豊かになり、別の集団が貧しいまま取り残されると、そこから深い怒りや絶望が生まれます。
研究者たちは、集団レベルでの政治的な排除や経済格差が、紛争の大きな要因になると指摘しています。自分たちの声が政治に反映されず、生活が苦しくなれば、人々は暴力的な手段に訴えたくなることもあるでしょう。
経済的に追い詰められた若者がテロ組織に加入してしまうケースも、世界各地で報告されています。貧困や教育の機会を奪われた状態が続くと、暴力が唯一の「出口」に見えてしまうことがあるのです。
つまり、経済的な安定や公正な政治のしくみは、直接的に平和とつながっています。格差の問題を放置することは、将来の紛争の種をまくことと同じだといえるかもしれません。
③ プロパガンダと情報操作が「敵」をつくる仕組み
戦争が始まる前には、ほとんどの場合「敵」のイメージがつくられます。メディアやSNSを通じて、特定の国や民族に対する偏見や恐怖心があおられ、やがて「あの人たちは危険だ」という空気が社会全体に広がっていくのです。
歴史を振り返ると、権力者が国内の不満をそらすために「外の敵」をつくり出すのは、古くから使われてきた手法でした。架空の脅威を煽り、人々の恐怖心を利用して戦争への支持を取りつけるのです。
現代ではSNSの普及によって、偏った情報や虚偽のニュースがかつてないスピードで拡散されるようになりました。正確な情報かどうかを確かめないまま、感情的な投稿を拡散してしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。
こうした情報操作に流されないためには、わたしたち一人ひとりが「ファクトチェック」の意識を持つことが大切です。ひとつの情報源だけを信じるのではなく、複数のメディアや書籍で情報を確認する習慣を身につけましょう。
歴史が教えてくれる「戦争をなくすために私たちができること」のヒント
過去の歴史には、戦争を乗り越え、平和を築いた先人たちの知恵がつまっています。同じ過ちを繰り返さないために、わたしたちは歴史から多くのことを学べるはずです。
① 広島・長崎の経験と被爆国・日本の役割
1945年8月、広島と長崎に原子爆弾が投下され、数十万人もの命が奪われました。日本は世界で唯一、戦争で核兵器の被害を受けた国です。この経験は、平和を考えるうえで計り知れない重みを持っています。
被爆者たちは戦後、核兵器の廃絶を訴え続けてきました。その活動は国際的にも高く評価され、2024年には日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)がノーベル平和賞を受賞しています。
「核兵器の被害者はわたしを最後にしてほしい」という被爆者の願いは、時代を超えてわたしたちの心に問いかけ続けています。被爆の記憶を次の世代に受け継ぎ、核兵器のない世界を実現することは、日本が果たすべき大切な役割でしょう。
広島の平和記念公園や長崎の原爆資料館を訪れることは、平和について深く考えるきっかけになります。まだ行ったことのない方は、ぜひ足を運んでみてください。
② かつて敵同士だった国が和解した事例
「戦争をしていた国同士が、本当に仲良くなれるのか」と疑問に思う方もいるでしょう。しかし歴史は、それが可能であることを証明してきました。
たとえば、日本とアメリカは80年ほど前、激しい戦争を繰り広げていました。多くの犠牲者を出し、原子爆弾まで投下されたにもかかわらず、戦後は強固な同盟関係を築いています。今では両国がかつて敵対していたなんて、想像しにくいほどです。
ヨーロッパではドイツとフランスが歴史的に何度も戦争を繰り返してきましたが、現在はEUのリーダーとして協力し合っています。二度と争わないという決意のもと、経済的・政治的な統合を進めてきた結果です。
これらの事例が示しているのは、「和解は不可能ではない」ということでしょう。時間はかかるかもしれませんが、対話と信頼の積み重ねによって、かつての敵は未来のパートナーになれるのです。
③ 南アフリカや北アイルランドの和平プロセス
国家間の和解だけでなく、国内での対立を乗り越えた事例からも、多くのことを学べます。
南アフリカでは、アパルトヘイト(人種隔離政策)という深刻な差別制度が長年にわたって続いていました。1994年にネルソン・マンデラが大統領に就任したあと、「真実和解委員会」という仕組みがつくられ、過去の暴力や人権侵害を明らかにしながら、報復ではなく赦しによる和解が目指されました。
北アイルランドでも、カトリック系とプロテスタント系の住民が30年近く武力衝突を繰り返していましたが、1998年の「ベルファスト合意」によって和平が実現しています。双方が歩み寄り、暴力ではなく対話で未来を選んだ結果でした。
どちらのケースも、和平に至るまでには多くの困難がありました。しかし、対話を諦めなかった人々がいたからこそ、平和が実現したのです。今も世界で続く紛争を見つめるとき、これらの成功事例は大きな希望を与えてくれるでしょう。
戦争をなくすために私たちができること7つの具体的な行動
「自分には何もできない」と感じるかもしれませんが、実はわたしたち一人ひとりにできることは、たくさんあります。ここでは、戦争をなくすために私たちができる7つの行動を紹介します。
① 「知る」ことから始める ― 複数の情報源でファクトチェック
まず最初にできることは、世界で何が起きているのかを知ることです。知らなければ、関心を持つこともできませんし、行動を起こすこともできません。
ただし、情報の取り方には注意が必要です。SNSやひとつのニュースサイトだけを見ていると、偏った情報にとらわれてしまうリスクがあります。新聞、テレビ、ウェブメディア、書籍など、複数の情報源からバランスよく情報を集めましょう。
発信元がどのような立場にあるのかを意識しながら、情報の正確性を確認する「ファクトチェック」の姿勢が、平和への第一歩になります。特定の国や集団を一方的に悪者にするような報道には、慎重に接することが大切です。
子どもたちにも「ニュースをうのみにしないで、いろいろな角度から見てみようね」と伝えていくことが、メディアリテラシーの育成にもつながるでしょう。
② SNSで関心を共有し周りに伝える
知ったことを自分の中にしまっておくだけでなく、周りの人にも伝えていくことが大切です。SNSは、そのための手軽で強力なツールになります。
自分が興味を持った問題や、信頼できる情報をシェアするだけでも、友人やフォロワーの意識を変えるきっかけになるかもしれません。一人が発信した情報が人から人へ広がることで、社会全体の意識を少しずつ変えていく力を持っています。
ただし、感情的な投稿や事実確認をしていない情報を拡散するのは逆効果でしょう。冷静な視点を持ちながら、建設的な情報発信を心がけることが重要です。
SNSだけでなく、家族や職場の同僚と平和について話してみるのもよいでしょう。難しいテーマだからこそ、身近な人同士で語り合うことに意味があります。
③ 「分かりやすいストーリー」を疑い多角的な視点を持つ
紛争が報道されるとき、わたしたちはつい「どちらが正義で、どちらが悪なのか」を求めてしまいがちです。しかし、現実の紛争はそれほど単純ではありません。
たとえば、ある戦争について「あの国は悪い」「こちら側を応援しよう」と簡単に割り切ることは危険でしょう。戦場に送られる若い兵士やその家族のことを想像すると、どちらの側にも苦しんでいる人がいることに気づきます。
「分かりやすいストーリー」を疑い、もう一歩踏み込んで考える姿勢こそが、平和への土台になります。メディアが伝えるフレームに乗るのではなく、当事者の声に耳を傾けてみましょう。
多角的な視点を持つことで、偏見やプロパガンダに流されにくくなります。「なぜこの紛争は起きたのか」「背景にはどんな歴史があるのか」と深掘りする習慣をつけていきたいものです。
④ 信頼できる団体へ寄付やボランティアで支援する
具体的なアクションとして、紛争地域で活動しているNGOやNPOへの寄付は、すぐに始められる支援のひとつです。
ユニセフ、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、セーブ・ザ・チルドレンなど、信頼性の高い国際機関は多数あります。100円単位から寄付できる団体もありますし、書き損じハガキや古本を送るだけで支援になる仕組みもあるのです。
「大きなことはできないけれど、小さなことなら」と思う気持ちが集まれば、それは紛争で苦しむ人々にとって大きな力になります。定期的な少額寄付を続けることが、安定的な支援の基盤を支えているのです。
また、国内でも難民支援のボランティアやイベントに参加する機会はあります。直接人と関わる経験を通じて、平和の意味をより深く実感できるでしょう。
⑤ フェアトレード商品など日常の消費行動を見直す
わたしたちが普段買っているものの中には、紛争と間接的につながっている商品があることをご存じでしょうか。
紛争地域で採掘された鉱物資源は「紛争鉱物」と呼ばれ、武装グループの資金源になっていることがあります。スマートフォンやパソコンに使われるレアメタルの一部も、こうした問題と無縁ではありません。
フェアトレード商品やエシカルな製品を意識的に選ぶことは、わたしたちの日常の買い物を通じて、紛争の資金源を断つ行動になります。コーヒーやチョコレート、衣料品など、フェアトレード認証のついた商品は身近なお店でも手に入るようになりました。
「消費は投票である」という考え方があります。何を買うかという日々の選択が、世界のどこかの誰かの暮らしを支えることにつながっているのです。
⑥ 選挙に行き平和を重視する政策に投票する
政治に関心を持つことも、平和のためにできる大切な行動です。戦争や紛争に対する政策は、選挙で選ばれた政治家たちが決めています。
日本の投票率は他の先進国と比べて低い水準にあります。「自分の一票で何が変わるの」と思うかもしれませんが、選挙に行かないということは、政策の方向性を他の人に委ねてしまうことでもあります。
平和を守るための外交政策や軍縮、国際協力にどのような姿勢をとっているかを比較したうえで投票することは、市民として平和に貢献する最も直接的な手段のひとつです。
政治の話題は避けられがちですが、平和について真剣に考えるなら、政治への参加は避けて通れません。まずは各候補者の政策を調べるところから始めてみましょう。
⑦ 身近な人間関係から「対話で解決する」姿勢を実践する
「世界平和」というと壮大なテーマに聞こえますが、実は身近な人間関係の中にもそのヒントがあります。
家庭での意見の食い違い、職場での対立、友人との考え方の違い。こうした日常の「小さな紛争」を暴力的な言葉や態度で解決しようとする人が増えれば、社会全体の空気はどんどん攻撃的になっていくでしょう。
相手の立場に立って考え、違う意見にも耳を傾け、対話を通じて解決策を見つけようとする姿勢こそが、平和な社会をつくる最も基本的な力です。これは、今日からすぐに実践できることではないでしょうか。
ある語り部の方は「戦争をなくすためにできることは、世界中の人と友だちになること」と語っていました。まずは目の前にいる人を大切にし、対話を諦めないこと。そこから平和は始まるのです。
無力感を手放すために ― 一人の行動が世界平和につながる理由
「戦争のニュースを見るたびに心が痛むけれど、自分には何もできない」。そんな無力感にさいなまれたことはありませんか。しかし、本当に何もできないのでしょうか。
① 「自分には何もできない」は本当なのか
ニュースで戦争の映像を見ると、多くの人が無力感を覚えます。遠い国で起きていることに、日本にいる自分が何の影響も及ぼせないと感じるのは自然なことでしょう。
しかし、振り返ってみてください。歴史上、大きな変化をもたらしてきたのは、ほとんどの場合、一人ひとりの小さな行動の積み重ねでした。南アフリカのアパルトヘイト撤廃も、世界中の市民による不買運動や署名活動が大きな力になったのです。
「自分には何もできない」という思い込みこそが、実は平和への最大の壁になっています。知ること、伝えること、寄付すること、投票すること。どれも一見小さな行動ですが、それが何千人、何万人と積み重なれば、社会を動かす力になります。
戦争を始めるのは少数の権力者かもしれませんが、戦争を止める力を持っているのは、わたしたち一人ひとりの意志と行動なのです。
② SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」と私たちの暮らし
SDGs(持続可能な開発目標)の目標16は「平和と公正をすべての人に」という内容です。この目標は、すべての人があらゆる形態の暴力から解放され、公正な制度のもとで暮らせる社会を目指しています。
具体的には、あらゆる場所での暴力の削減、子どもへの虐待や搾取の撲滅、すべての人への司法アクセスの提供、違法な武器取引の削減などが掲げられています。SDGs目標16は、他のすべての目標を達成するための「土台」ともいわれており、平和なくして持続可能な発展はありえません。
この目標は遠い国の話だけではなく、日本国内の課題にもつながっています。家庭内暴力や子どもへの虐待、ヘイトスピーチ、差別など、わたしたちの身の回りにも「平和と公正」が脅かされている場面は存在するのです。
SDGsを単なるスローガンとして終わらせるのではなく、自分の暮らしの中でできることを考えていくことが大切でしょう。
③ 消極的平和と積極的平和 ― 本当の「平和」とは何か
「平和」と聞いて、何をイメージしますか。多くの人は「戦争がない状態」を思い浮かべるでしょう。平和学の父と呼ばれるヨハン・ガルトゥングは、この状態を「消極的平和」と定義しました。
一方で、ガルトゥングはもうひとつの概念として「積極的平和」を提唱しています。これは、貧困や差別、抑圧といった「構造的暴力」がない状態を指すものです。たとえ戦争がなくても、人々が貧困や差別に苦しんでいるのであれば、それは本当の意味での平和とはいえないという考え方です。
さらに、偏見や不寛容、無関心といった「文化的暴力」も、直接的な暴力や構造的暴力を下支えしていると指摘されています。つまり、わたしたちの中にある偏見や無関心も、広い意味では平和を脅かす要因になりうるということでしょう。
本当の平和を実現するためには、戦争をなくすだけでなく、貧困や差別、格差といった社会の根本的な問題に向き合うことが必要です。そしてそれは、わたしたち一人ひとりの意識と行動から始まるのです。
子どもに伝えたい「戦争をなくすために私たちができること」
次の世代を担う子どもたちに、平和の大切さをどう伝えていけばよいのでしょうか。戦争をなくすために私たちができることのなかでも、教育は最も重要なテーマのひとつです。
① 子どもの「どうして戦争するの?」にどう答えるか
テレビやネットで戦争のニュースを見た子どもが「どうして戦争するの?」と聞いてくることがあります。この素朴な疑問に、大人としてどう答えるかはとても大切な問題です。
正解はひとつではありませんが、まずは子どもの気持ちに寄り添い、「怖いよね」「悲しいよね」と共感することから始めてみましょう。そのうえで、年齢に合わせてわかりやすく伝えることが大事です。
「戦争は誰も幸せにしないけれど、仲良くするのが難しいときもある。だからこそ、話し合いで解決することが大切なんだよ」と伝えることは、子どもの平和観の基礎をつくります。
また、ウクライナやガザ地区のことだけでなく、世界にはもっと多くの場所で同じように苦しんでいる人たちがいることも、あわせて教えてあげたいものです。
② 家庭でできる平和教育と多様性への理解
平和教育は学校だけでおこなうものではありません。家庭のなかで日常的に実践できることがたくさんあります。
たとえば、外国の文化や料理に触れる機会をつくること。異なる言葉を話す人や違う肌の色の人と実際に交流すること。絵本や映画を通じて、さまざまな国の暮らしを知ること。こうした体験が、子どもの多様性への理解を育みます。
「違い」を怖がるのではなく、「違い」を面白いと感じられる感性を育てることが、偏見や差別の芽を摘み取ることにつながります。これは平和教育の根幹ともいえるでしょう。
また、家庭内での言葉づかいやふるまいも大切です。親がほかの国や文化に対して偏った発言をしていれば、子どもはそれを自然と吸収してしまいます。日常の会話のなかで、多様性を尊重する姿勢を見せていくことが求められます。
③ 次の世代に「非暴力で解決する力」を育てる
平和な世界をつくるためには、次の世代に「暴力に頼らず問題を解決する力」を育てることが不可欠です。
子ども同士のけんかやいじめは、小さな「紛争」ともいえます。そのとき、力で相手をねじ伏せるのではなく、言葉で気持ちを伝えること、相手の話を聞くこと、お互いが納得できる方法を一緒に探すこと。こうした経験が、非暴力的な問題解決能力を育てます。
暴力ではなく対話で問題を解決できる子どもたちが増えれば、やがてその子たちが大人になり、社会全体の空気が変わっていきます。教育の力は、時間がかかるかもしれませんが、最も確実に世界を変える方法でしょう。
唯一の被爆国に暮らすわたしたちには、平和の大切さを次の世代に伝えていく特別な使命があります。「平和に暮らせることは当たり前じゃないんだよ」と、子どもたちに語りかけていきましょう。
戦争をなくすために私たちができることを今日から始めよう
ここまで、戦争の現状や原因、歴史からの教訓、そして具体的にできる行動について見てきました。最後に、この記事で伝えたかったことをまとめます。
① 小さな一歩の積み重ねが世界を変える
「世界平和」というと途方もなく大きな目標に思えますが、その実現は一人ひとりの小さな行動から始まります。
ニュースに関心を持つ。SNSで信頼できる情報を共有する。寄付をする。フェアトレード商品を手にとってみる。選挙に行く。身近な人との対話を大切にする。どれも今日からすぐにできることばかりでしょう。
大切なのは、完璧を目指すことではなく、自分にできることをひとつずつ始めてみることです。100人が1パーセントずつ行動を変えれば、それだけで大きなうねりが生まれます。
過去の歴史が教えてくれるように、平和は誰かが与えてくれるものではありません。わたしたち自身が選び取り、守り続けていくものです。
② 「関心を持ち続けること」が最大の力になる
世界の紛争は複雑で、すぐに解決できるものではありません。だからこそ、一時的な関心で終わらせず、「持ち続ける」ことがとても大切です。
報道が少なくなっても、支援を必要としている人たちがいなくなったわけではありません。紛争が長引いて状況が悪化しているケースも少なくないのです。
関心を持ち続け、忘れないこと。それ自体が、紛争に苦しむ人々にとっての大きな支えになります。無関心こそが、平和にとって最も大きな敵なのかもしれません。
この記事を読んでくださったあなたは、すでに「知る」という第一歩を踏み出しています。その一歩を止めずに、明日も、来月も、来年も、平和について考え続けていきましょう。わたしたちの子どもたちが大人になるころ、少しでも平和な世界が広がっていることを願って。
まとめ|戦争をなくすために私たちができることは「知る」から始まる
この記事では、戦争や紛争の現状から原因、歴史の教訓、そして具体的にできる行動までを解説してきました。以下の表で、ポイントをふり返りましょう。
| テーマ | ポイント |
|---|---|
| 世界の現状 | 59以上の紛争が進行中。難民・避難民は1億2,000万人超 |
| 戦争の原因 | 民族・宗教・資源の対立、経済格差、情報操作が複雑にからみ合う |
| 歴史の教訓 | 広島・長崎の経験、日米和解、南アフリカの和平が「対話の力」を証明 |
| 7つの行動 | 知る・伝える・疑う・寄付する・消費を変える・投票する・対話する |
| 平和の本質 | 戦争がないだけでなく、貧困や差別のない「積極的平和」が必要 |
| 子どもへ | 非暴力で問題を解決する力と多様性を尊重する心を育てる |
戦争をなくすために私たちができることは、決して大げさなものではありません。まずは知ること、そして関心を持ち続けること。その小さな一歩が、やがて世界を変える大きな力になります。今日できることを、ひとつだけでも始めてみませんか。
参考リンク
- 外務省|平和維持・平和構築
- 外務省|日本の平和国家としての歩み
- 国連UNHCR協会|難民を守る。難民を支える。
- ユニセフ|紛争下の子ども4億7,300万人
- JICA|平和構築への取り組み
- 日本ユニセフ協会|SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」

