元旦になると、一年のはじめに「年神様(としがみさま)」をお迎えする方も多いと思います。
そもそも、正月は、としがみ様をお迎えしてお祀りするための行事なのです。そのため、〆飾りで歳神様をお迎えしたり、門松(かどまつ)も、としがみ様をお招きするための依り代だと言われています。
私たちが何気なくしているお正月の行為は、実は神様をお呼びする行為だったんですね。
その他にも、「お年玉」も子供に上げたりしますよね?そもそも、なんで正月に子供にお金なんだろう。なんで「お年玉」っていうんだろう?って思いますよね。
今回は、年神様とはどんな神様なのか? お年玉に隠された神道的な意味について書いていきます。
年神様(としがみさま)とは
年神様とはどんな神様か?というと、地域によって違いもあるのですが、穀物神や祖霊神と考えられています。
祖霊神は、穀物の神として、新しい年に福をもたらしてくれるお客様なのですね。柳田國男さんによると、年神様は「一年を守護する神、農作を守護する田の神、家を守護する祖霊」の3つを一つの神とする、と言っています。一年のはじめにお客様としていらっしゃる、とてもありがたい神様ですよね。
その神様を門松などを飾ってお招きしていたわけです。この祖霊神ですが、異世界からやってくるので、人間のような姿ではなく、顔を黒く塗ったり、人間とは違う姿で現れます。
そのため、日本に仏教が伝わると、仏典の中の「鬼」と同一視してしまうようになります。
オニの正体
神様なのに、、鬼!?と思われる方も多いと思います。
私たちは、「鬼」というと、とんでもない悪者だと思ってしまいますよね。しかし、それは「桃太郎」などの絵本が原因の「思い込み」なのかもしれません。
そもそも、鬼は自分たちの島に住んでいただけとの見方もできるのです。なので、オニの本質は、桃太郎に財宝を与え、福をもたらした存在、という民俗学者もいらっしゃいます。実際、村を守った「強い物」として鬼を崇めていたり、神社で「神」として鬼を祀っているなど鬼を善的に捉え、また、畏敬の念で見ている例は全国にもたくさんあります。
あなたはどっちが本当だと思いますか?どちらが正解、という事もないのでしょうし、どっちも正解なのかもしれませんね。
と、いうわけで、話を年神様(祖霊神)に戻すと、祖霊神は異世界から来るときに、人間とは違う姿をしているので、悪事を働く鬼と同一視させられていることがある、ということです。
その最たる例が、「豆まき」です。「鬼は~外~」と言って豆をぶつけられますが、実は、そのオニは、福をもたらしてくれる祖霊神だったのです・・
豆をぶつけられても、気にせず福を持ってきてくれる懐の深さに、感謝しきれませんね。
お年玉って何?
ちょっと待ってください。豆まきに出てくるオニが、祖霊神だなんて、なんでわかるんですか?悪い鬼だっているでしょう??
と言われるかもしれませんが・・それには理由があります。
その理由を書く前に、「お年玉」について知る必要があります。このお年玉、今は子供がもらう「お金」ですが、5円玉、のようなお金の「玉」ではないのです。
この「タマ」は、祖霊神が運んでくる新年のタマ(魂)と穀物のタマ(霊)のことを言うそうです。
そのタマ(魂・霊)を一年の最初に身体に入れることで、新しい魂として生き返る。これがお年玉の本当の意味です。新しい魂を入れる、という考え方も、再生を繰り返す神道的な考え方ですよね。
ちなみに、新しい魂を入れて、歳を一緒に取ろうよ、というこどで、元旦に一斉に年をとります。20の人は、21歳になるわけです。これが「数え年」の意味です。
豆まきの本当の意味は神道的だった
さて、話を豆まきに戻します。豆まきの豆こそ、お年玉のタマだったのです。
どういうことかと言うと、去年の一年分の自分の穢れ(けがれ)、古い魂を豆につけて、それをオニ(祖霊神)に返す、というのが、豆まきの意味だったのです。
そして、新しい魂のついた豆(魂)をもらうことで、それを食べて、新しい魂をからだに取り入れる、という行事だったんですね。
まさに、自分の穢れを払って、新しく生き変えろうという前向きな神道らしい行事です。そのあたりは↓の記事でも書いています。
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少し、豆まきの時の気分が変わりますよね。
そして、いつのまにか悪い存在ばかりのレッテルを貼られている「鬼」さんをもう一度考え直す必要もありそうです。